C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第21章 真実の愛※
わたしたちはラクエの海から、医療棟に帰ってきた。ランギルスの病室に向かって歩いていると、バネッサが目の前から歩いてきて、わたしに手を振っていた。
「バネッサ……!どうしたの?もしかして、着替えを持ってきてくれたのってバネッサかな?」
「そうよ、フィンラルのお見舞いに来たついでにね!明日にはアジトに戻って来れるんでしょう?」
「ありがとう!う、うん、明日には戻れるって、言ってた……」
「フィンラルは未だに目を覚さないの……だから、明日は団長といっしょにお見舞いに来るから、ミライも魔法帝との話しが終わったら、いっしょに帰りましょうね?」
「わ、わかった、」
バネッサはわたしに手を振って去っていった。バネッサはランギルスの方を一度も見ることはなかった。
「なぁ、ミライ、兄さんが目を覚さないって、どういうことなんだ……」
「……え?」
ランギルスはフィンラルを試合で“倒した”と思っているだけで、瀕死状態にまで追い込んだこと覚えていないのだろうか。憎悪の感情によって放たれた、凶々しい魔力の放出で相手を攻撃したことをわからない、とでも言っているかのようだった。
「教えてくれないか?僕が試合でどんなことをしたのか、を」
「……えっと、ランギルスが覚えてないなら……い」
そう言い終わらないうちに、ランギルスがわたしの言葉を遮った。
「よくない。僕は、兄さんに勝ったが、兄さんを殺そうとした、ってことかい……この、掌で……」
静かな廊下にランギルスの消え入りそうな声が響いた。窓の外の月明かりだけが廊下に差し込んでいた。暗くて、ランギルスの表情がよく見えなかった。ランギルスに試合のことを言わない方がいいと思っていたが、それはランギルスにとって本当に正しいことなのだろうか。現実から目を背けていても、ランギルスの身に起こっていることは事実だから。明日から拘束されて、ランギルスはわけのわからないまま尋問を受けなければならなくなる。なら、今、包み隠さずに話そう、と思った。
「あ、あのね……ランギルスは試合で我を失ってたの、凶々しい魔力を放っていた。元々強い魔力がさらに膨れ上がって、相手を攻撃し続けていたの……勝ちとか負けとかじゃなくて、まるで殺すことが目的かのようだった」
「……、兄さんは?」