C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第19章 掌─ランギルスside─※
夢うつつでぼんやり天井を眺めていると、鼻につく薬品の匂いに失われていた感覚が戻ってくる。意識と体がうまく繋がっていないのか体が思うように動かない。体中が痛くて重いんだ……その気怠さに再度目を瞑った。記憶がふつふつと蘇ってくる。
そうだ、僕はロイヤルナイツ選抜試験で気を失って……この独特な匂いは記憶にある。ここはきっと城の医療棟だろうか。
────僕は負けたんだ……兄さんと同じ団のあいつに……
第2試合で兄さんを倒して、そのまま準決勝で黒の暴牛のアスタと戦った。僕の魔力が尽きて、僕はあいつに……クソっ……
試合中、僕は無意識に魔力を増強させていたような気がする。僕の中で激しい憎悪の感情に飲み込まれたとき、僕の中の僕が意識を乗っ取って行動しているような……何なんだ一体……思い出そうとすると、頭がズキズキと痛んでよく思い出せないんだ。
僕は温かい夢を見ていた気がする。誰かが僕の掌を優しく撫でてくれていた────……
僕は意識が戻って夢から醒めているはずなのに、なぜか僕は掌に温かさを感じた。不思議に思い、僕はむくりと体を起こした。
霞んでいた視界が晴れていく。目の前には僕の手を握り、ベットの横のイスに座ったまま僕の寝ているベットに頭を突っ伏して寝息を立てている女……ミライの姿があった。僕が気を失っている間、つまり夢を見ていたときからミライは僕のそばにいたのだろうか?夢の中の温かい手の感触は確かに記憶にあったのだ。
団員の応援はいいのか?兄さんの看病に行かなくていいのか?どうして僕の病室にミライがいるんだ……僕はまだ夢を見ているのだろうか?ミライの寝息と掌から伝わる温かさがこれはリアルだと教えてくれる。いろんな疑問はあるが、ミライが僕のそばにいてくれているその事実が素直に嬉しかった。僕の手を優しく包み込んでくれるミライがあまりにも愛おしくて、僕はミライが起きたら、素直に気持ちを伝えて傷つけたことを謝ろうと思った。
そんなことを考えていると、ミライの手がピクッと動いたかと思えば、ミライはベットに突っ伏していた上半身をむくりと起こした。
「ん……あれ……?ランギルス……起きたの……?よかった……」
ミライは目を擦りながら、僕を見て微笑んだ。