C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第18章 選抜試験にて
わたしの呼びかけにフィンラルからの応答はなかった。遠目で見るよりも近くで見たフィンラルの体は穴だらけだ。傷の深さも傷の多さも出血の量も、生きているとは思えない絶望的な姿である。ノエルが脈を測る。
「まずい……このままじゃ……ミライ、止血を手伝って!布どうしよう……」
「わ、わかった……ノエルはこのあとも試合があるから、わたしのワンピースを破るから」
わたしとノエルは回復魔導士が来るまで、わたしのワンピースの裾を破りそれを布代わりにし止血をする。止血をしてもしきれないほど出血していた。助かるのかどうかを聞くことが怖くてただ黙って手当てをしていた。
「お前……おかしいぞ!!もう勝負は決まっただろ!!」
ランギルスを止めに入ったアスタを始めラックもマグナも敵意を剥き出しにし、試合に関係なく戦闘が始まりそうな状況になっている。フィンラルを早く避難させなければ危険だ。
「あぁ?大躍進中か知らないけど、黒の暴牛の下っ端共が金色の夜明けの副団長に一体何を……」
「大切な仲間を守るのに立場なんか関係あるか!!」
アスタがそう言うと、そこへ魔法帯が幹部と回復魔導士を連れて現れる。
「そこまでだ!仲間に手加減して挑む者は信用できないけど……仲間を殺そうとする者は信用以前の問題だね……」
魔法帝がそう言うと、アスタもランギルスも一旦引いた。
そして魔法帝と共に現れた回復魔導士がフィンラルの元へと来て、魔法を発動しフィンラルの治療を始める。現実世界なら間違いなく死んでいるはずだ。この世界の魔法を信じて、フィンラルが助かることを願う他なかった。
ランギルスがフィンラルに対して劣等感を抱いていても、こんなに傷つけてしまうほど憎んでいるはずがないのだ。本当のランギルスは優しいはず……わたしはそう信じていた。こんなことをしてしまうなんておかしい。誰かが憎悪の感情を利用して操っているかのようだ。だとしたら、さっきのあの凶々しい魔力は────……
「魔法帝、次のチームが試合をする前にコイツらとの試合をさせてください」
ランギルスが魔法帝にそう言うと、アスタが振り返りわたしを見た。
「このままじゃミライさんにも当たるぞ?いいのか?」
「あの女にも死んでもらう……もう始めよう」
ランギルスは手を振りかざした。