第7章 夏の思い出
「え・・・?」
意味が分からず首を傾げる。
すると倫太郎君の大きな手が私の頬をそっと撫でた。
顔を上げると、いつもより熱っぽい目をした倫太郎君と視線が重なる。
倫太郎「キス、していい?」
「キ、キス?」
目を見開き驚いていると、倫太郎君の顔が近付きそっと唇が重なった。
柔らかい唇の感触はすぐに離れる。
「・・・」
突然の出来事に思考が追いつかない。
倫太郎「・・ごめん、返事聞いてないのに。俺、何焦ってんだろ。」
呟く倫太郎君の顔は赤く、手の甲で口元を隠した。
「あの、、、」
今のキスは何?
何でキスなんかしたの?
聞きたい事はあるのに、上手く言葉が出てこなくて口籠もってしまう。
すると倫太郎君は私の頭にポンと手を置いた。
倫太郎「軽い気持ちでキスしたんじゃないから。でも、ともみを困らせたくないから今は何も言わないけど、少しずつでいいから俺の事男として意識してくれる?」
いつもと違う柔らかい声に、倫太郎君の気持ちが伝わってくる。
きっと恋愛経験がなく、恋愛に疎い私の事を気遣ってくれたんだろうなと思った。
私が黙って頷くと、倫太郎君は優しく微笑んた。
倫太郎「じゃあ俺、先出てるから、ともみは鍵だけ宜しく。」
そう言うと、荷物を手に倫太郎君は外へ出て行った。