第32章 侑end
けど、侑の目を見た治は目を見開いた。
治「・・なんや、お前わざと殴られようとしてるんか?」
侑「・・はっ、さすが双子、以心伝心てやつか?
こんな雑念早よ取っ払って迎えに行かなあかんからな。
せやからサム、俺の事思いっきり殴れ。」
しょぼくれた顔をしていると思った侑の顔は強い意志を持ち、既に雑念なんてないように見えた。
治「それやったら早よ行ったらええやんかっ!」
侑「ちょっとでもともみちゃんの事、疑った自分が許せへんねんっ‼︎」
治「・・・ハァ〜面倒くさいヤツやなぁ。
まぁ、けど俺も一発殴らな気が済まんしな?
ともみちゃんがあんな風に感情曝け出せる相手はお前しかおらんのやから、ちゃんと受け止めてやりーやっ‼︎」
ドゴッ
鈍い音と共に、侑が床に転がった。
佐々木「・・・ホンマ男ってよう分からんわ…」
治「ったく、、殴るこっちも痛いねん…料理人やぞ?」
侑は口の端を手の甲で拭うと、口の端を上げゆっくり立ち上がった。
侑「サム、悪かったな…
けどお陰で頭スッキリしたわ。」
治「ハッ、お陰でこっちまで酔いが覚めたわ。ほら、早よ行き?」
佐々木「あと、あれも持ってってな?」
夕子が入り口付近を指差すと、そこにはスーツケースが鎮座していた。
治「・・うっわ、また大きな忘れもんしたなー。」
侑「ハハッ、ともみちゃんらしいな。
ほなうちの姫さん、迎えに行ってくるさかい!」
吹っ切れた顔をした侑はスーツケースを手にすると足早に店を出て行った。