第32章 侑end
「・・もしもし、クロ?」
黒尾「ともみ?まだ大阪にいんの?」
「・・うん。」
黒尾「そっかー。帰りの新幹線の時間が分かれば東京駅まで迎えに行くケド?」
チクッと胸が痛む。
クロにはちゃんと話さないと…。
「・・クロ。」
黒尾「んー?」
クロの低くて優しい声が耳を、、心を揺さぶる。
私は出来る限りいつもと同じトーンで切り出した。
「・・気持ち、確かめたよ。電話で話すのもアレだし、、そっちに帰ったらちゃんと話すね?」
一瞬の沈黙が流れるけど、その沈黙はすぐにクロの明るく振る舞う声で破られた。
黒尾「そっかーー、確かめちまったかー!」
「・・・うん、、」
黒尾「いや、なんとなく予想はしてたけどな。
つーかともみ、今日はもう遅いし、危ねーからもう一泊して来いよ?研磨には俺から話しとくから。」
「えっ?いや、もう少ししたら帰ろうと思ってたんだけど…」
黒尾「ダーメ。それに俺も今日は酒飲みたい気分になったから、車出せねーわ。わりーな?
・・だから明日ゆっくり帰って来いよ。」
「・・うん、分かった。」
黒尾「ほらっ、だったら暗い声出してねーでさっさとアイツんとこ行けよ?」
・・・もう、、何で全部お見通しなの…。
少し前に止まった筈の涙がまたポロポロと溢れ出した。
クロは昔からこうだった…
普段は意地悪言ったり、からかったりしてくるくせに、何かあった時は必ず気付いてくれていつも私の事を励ましてくれた。
今もこうして私が侑君のところへ行けるように背中を押してくれている。
「・・・クロぉ、、私にとってクロは大事な人、、だから…
それはこの先もずっと、、ずーーっと変わらないからっ!」
嗚咽を漏らしても、声が震えても、何とか伝えたかった…。
クロへの感謝の気持ちを…。
黒尾「・・俺もだよ。ともみは子供の頃からずっと特別だった。
ほんとは俺の手で幸せにしてやりたかったけどな、、。
だからともみ、ちゃんと幸せになれよ?」
「うん…ありがとう…」
優しい幼馴染に別れを告げ、空を仰ぐ。
涙で濡れた頬を拭うと、来た道を戻るべく踵を返した。