第32章 侑end
俺はカマをかけた。
佐久早「・・原さん。日向の専属栄養士、ミーティングルームに来てるぞ。」
その瞬間、侑を取り巻く空気がピンッと張り詰めた。
いつものヘラヘラした表情から一気に真面目な顔つきに変わると、俺の横を一瞬にして通り過ぎた。
佐久早「・・やっぱり。」
俺の勘は大抵当たる。
元恋人、ってとこか…。
まぁ、俺にはカンケーのない話しだ。
そう思いながら部屋に入り、ジャージのポケットから彼女の名刺を取り出しデスクの上に置いた。
佐久早「はぁ、、何か疲れた。」
とりあえずシャワーでも浴びてすっきりしようと、窓際に干してあるTシャツに手を伸ばした。
佐久早「・・・?」
カーテンの隙間からチラッと外が見え、そこには原さんの後ろ姿と、サングラスを掛けた長身の女の姿が見えた。
何か話してるようだけど、ここは2階で話してる内容までは分からない…。
待て…。
あの女って…。
サングラスを掛けた女に見覚えがあった。
佐久早「・・・マズイな。」
侑をけしかけた事を後悔しながら、気付いた時には部屋を飛び出していた。