第32章 侑end
佐久早side
ミーティングルームを出て自室へと足を向ける。
上着のポケットに両手を突っ込みながらぼんやりと慣れた廊下を歩く。
思い浮かべるのは今日会ったばかりの彼女のこと…
不思議な感覚だった。
普段なら初対面の人間が入って来た時点で自分は出て行くのに、何故か俺はあの人を受け入れた。
まず見た目が綺麗で透明感のある人だと思った。
その上控えめな感じも印象が良かった。
1番好感が持てたのは名刺を渡す際に見えた爪が短く綺麗に切り揃えられ、ネイルがしていなかったところだ。
俺はトイレで手を洗った後にピッピッと水飛沫を飛ばすヤツが嫌いだ。
異性に至ってはゴテゴテのネイルをし、長い爪をしている女が特に苦手だ。
日向の専属栄養士か…。
うちのチームの栄養士もあれぐらい熱心だと良いのにな。
そんな事を考えている間に自分部屋の前に着いた。
ポケットから鍵を取り出そうと手を突っ込んだ時、隣の部屋のドアが開いた。