第29章 黒尾end
「・・あの時、日本を離れた事を後悔した事もあったけど、今はこれで良かったって思ってる。
侑君にずっとお礼を言いたかったの…。
あの時、私の背中を押してくれて本当にありがとう…。」
ようやく言えたお礼の言葉は少し声が震えてしまった。
侑「・・そんなん俺の方こそありがとうや。ともみちゃん居らんくなってから絶対に日本代表に選ばれたる!って思って死ぬほど練習したしな。
お陰で代表入りも果たせたし、入りたかったチームにも入れて万々歳や!」
侑君の人懐っこい笑顔に私もつられて自然と笑顔になる。
「侑君はホント凄いなぁ…。
私はようやく今スタートラインに立てた感じなのに。
でも、実際に夢を叶えた侑君や治君を見てたら私も新しい事に挑戦してみたくなってきたよ。」
侑「お?ええやん!さすが元稲荷崎、ともみちゃんも最強の挑戦者やな!」
「フフッ、そんな強そうなものじゃないよー(笑)けど、もっと勉強して日本でもちゃんと資格を取ったら、仕事の幅が広がるかなって。」
侑「そういうトコ、昔と変わらんな。」
「そうかな?侑君は有名選手になっても中身は全然変わってなくてちょっと安心したよ。」
侑「え?それは俺の中身は高校生のまんま、ってこと?」
ちがうよーと笑い合う私達を治君が呼びに来た。
治「2人共、そろそろ始まるで?」
「うん」「今行くわ!」
自分でも驚く程、自然と侑君と話す事が出来た。
重く、しんみりとした空気を変えてくれたのは侑君のお陰だけど、
心の奥にあったモヤモヤは消え、心から笑ってありがとうを言えた。