第25章 新たな道
黒尾「それでー?何かあったんデショ?」
頭を撫でながらそれとなく聞いてみる。
「んー…。今日は良いコトあった!
日向とえいよーしの個人けーやくしたの…
ふふふ、すごい?」
眠くなってきたのか、時々目を見て開けては閉じ、開けては閉じを繰り返している。
黒尾「すげーじゃん。日向は将来有望だぞ?
良かったな。」
「フフッ、うん、良かった。あとね。あと、、、」
黒尾「うん。あとは?」
「・・・ッ」
言葉を詰まらせたともみの表情が悲しげなものに変わった。
眉は八の字に下がり、何かを我慢するかのように口をギュッと閉じた。
黒尾「ともみ?」
「・・・ーー」
僅かに動いた唇、何を発したかは聞き取れなかった。
けど、閉じた目から一筋の涙が溢れた。
さっきまであんなにご機嫌だったのに、何で泣いてんだよ…。
濡れた頬をそっと指で拭いてやると、その数秒後、ともみはスー、スーと静かに寝息を立て始めた。
でも、まぁ何となく涙のワケは分かった気がする。
日向に木兎、
2人ともブラックジャッカルのメンバーだ。
大方話の流れで宮侑の話にでもなったんだろう。
黒尾「・・もう5年経つんだぞ?いい加減忘れろよ…。」
酒のせいでほんのり赤く染まった頬に手をあてた。
黒尾「・・・それは俺もか。」
正直、昔から女に困った事はない。
来るもの拒まずで付き合ったりしてきたが、社会人になってからは女に構う時間が勿体無くて上手いこと躱してきた。
でも目の前で眠るともみだけは自分の手で幸せにしてやりたいと思った。