第25章 新たな道
研磨side
戸棚からキャットフードを取り出し、カラカラと音を立てながら皿に移す。
そんな俺をコタツから顔だけ出しているクロがじっと見ている。
研磨「・・何?」
何か言いたげなクロに横目でチラッと視線を向けた。
クロ「いーや別に?良い歳の男女が2人、同じ屋根の下で暮らしてるってのに何もないワケ?」
研磨「・・クロと一緒にしないで。お互い仕事のサポートしてるだけだし。」
クロ「へ〜。」
意味深な笑みを浮かべるクロを無視して、窓を開け縁台にお皿を置いた。
この家にともみが来てからもう3ヶ月たった。
最初、ともみがイタリアに行くって聞いた時は驚いたけど、距離は大した問題じゃない。
携帯やネット環境があれば世界のどこにいたって繋がるし。
だから#NAME 1#がイタリアに行ってからもそれなりに連絡は取り合ってた。
そして去年の秋、向こうの大学を卒業したともみから日本に帰る事を聞いた。
早速ご飯を食べに来た野良の頭を撫でていると、
クロ「研磨〜シャワー貸りるわ。」
と背後から声が聞こえた。
研磨「んー。」
クロが最近ウチに来るペースが増えた。
仕事だって忙しいのに、昨日も夜遅くに来てともみに夜食を作ってもらってたし…
ほんとわかりやすい。
キッチンからふわっと味噌汁の良い匂いが漂ってきた。
いつまでも引き留められないのは分かってる。
けど今はまだ、もう少しこの関係を続けていたい。
ニャー、と鳴く黒猫をひと撫でし、良い匂いの元へと足を向けた。