第20章 2人の日常
目の前にいる人は本当に高校生なのだろうか…。
まるで人生を折り返してそうな発言と佇まいに、マジマジと観察してしまう。
麦茶を口にした北さんが私の視線に気づくと、「あぁ。」と思い出したかのように携帯を差し出した。
北「携帯やったな、使ってええで?侑に掛けるか?」
「・・え?あ、はい…」
北さんの口から自然に侑君の名前が出た事に少し驚いた。
北「侑と付き合うてるんやろ?」
「えっ?知ってるんですか…?」
北「インハイの時、ずっと浮かれとったからな。ベラベラ自慢しとったわ。」
その光景が簡単に想像出来てしまい、カァッと顔が熱くなる。
北さんは気にする素振りもなく、淡々と話を続けた。
北「侑、調子エエねん。ここんとこずっと。
今までのアイツはノってる時とあかん時のムラがあったんやけど、今年入ってから明らかに変わってん。
#NAME2#さんの支えが大きいんやろな。」
北さんの真っ直な目が私を映した。
けど、私は首を横に振り目を伏せた。
「いえ、支えて貰ったのは私の方なんです。
侑君の明るさと優しさに救われて、私の暗い人生が180度変わりました。
・・私には勿体ない位、侑君は凄い人です。」
そして急激に押し寄せる後悔…。
そんな大切な人がきっと今頃心配してる。
連絡も取れず、どこに行ったかも分からなくて探し回ってるかもしれない。
私はガバッ、と顔を上げ、テーブルに置かれた北さんの携帯に手を伸ばした。
が、私が手に取るより早く、携帯はすでに北さんの手の中にあった。
「あっ、あの…」
北さんはスッと立ち上がり、
北「灸を据えてくるさかい。悪いようにはせんから、ちょっとそこで待っとき?」
そう言い残し、携帯を持ってどこかへ行って
しまった。