第20章 2人の日常
「・・・えー。」
1人、取り残されてしまった。
携帯も持って行っちゃったし。。
しかも灸を据えてくるって…一体何をしに行ったんだろう。。
・・けど、北さんて面倒見がいい人だなぁ。
侑君達からは怖がられてるみたいけど、実際は怖くないし。
真っ直ぐで真面目な人。
そんな事を思っていると、
「あらあら、信ちゃんがこんな別嬪さん連れて来とうとは…ふふふ。」
ニコニコと笑い、優しそうなおばあちゃんが手に救急箱を持って現れた。
私は居住まいを正しお辞儀をする。
「お邪魔してます…」
「ハイハイ、いらっしゃい。
信ちゃんに怪我の手当てを頼まれたんやけど、見してもらえる?」
信ちゃん…。
まるで子供を呼ぶかのような言い方に頬が緩む。
「手当まで、、すいません…。お願いします…。」
おずおずと足を見せると、おばあちゃんは痛そうやね〜と言いながら慣れた手つきで消毒をし、絆創膏を貼ってくれた。
「ハイ出来た。昔は信ちゃんもよう傷こしらえて来たけど、最近はこの救急箱も出番が少なくなってもうたわ。」
確かに木製の救急箱は年季が入っている。
「助かりました、ありがとうございます。」
「ふふふ、困った時はお互い様やから。」
「あ…そのセリフ、さっき北さ、、信介さんも同じ事言ってました。
信介さんはおばあちゃん子、なんですね。」
そう言うと、おばあちゃんは嬉しそうに笑った。
「小さい頃からよう私にくっついとったから似てしもうたんやろね。
けど、私が言うのも何やけど信ちゃんはホンマにエエ子やさかい、長いお付き合いしたってね?」
「・・えーっと…はい?」
もしかしたら私の事、北さんの彼女だと勘違いしてる…?
返答に困り苦笑いを浮かべながら曖昧に返事をした。
そんな話しをしていると、ちょうど北さんが戻ってきた。
するとおばあちゃんはフフッと含み笑いを溢し、
「若い2人の邪魔はせんから。ほな、ごゆっくり〜。」
北さんの肩をポンと叩くと部屋を出て行ってしまった。