第20章 2人の日常
ゴクッゴクッと喉を鳴らし冷たい麦茶を飲み干すと、暑く乾いた喉と身体かひんやりと潤っていく。
「ん〜!生き帰りました〜!」
空になったグラスをテーブルに置くと、向かいに座る北さんが黙ってお代わりを注いでくれた。
「お茶まで頂いて、本当にすいません…。
助かりました。」
背筋を伸ばして深くお辞儀をする。
北「そんな畏まらんでええよ。
足、痛いやろ?楽に崩してや?」
私は苦笑いを浮かべ、正座していた足を崩した。
あの後、北さんに携帯を借りて侑君に連絡しようとしたのだが、北さんはランニングの途中だったらしく、携帯を持っていなかった。
「俺ん家すぐ近くやし、手当てもしたるから。」
と言う北さんの言葉に甘えさせてもらう事になり、家まではおんぶで連れて来てもらったのだ。
肩越しに謝る私に、
「気にせんでエエ、困った時はお互い様や。」
と言う北さんの背中は広くて温かった。
ゴトッ。
向かいに座る北さんが携帯をテーブルに置く。
北「何か事情があるんやろ?携帯も財布も持たんと、足痛めてまでこんな遠くまで来て。」
北さんの真っ直ぐな目が私を見つめる。
「・・その、、実は下宿を飛び出して来ちゃったんです。」
北「・・双子が原因か?」
「いえ、、。私が上手く止めてれば良かったんですけど…。
侑君と治君が口論を始めて、最初は下らない事で言い合ってたのが、終いには殴り合いになってしまって。
どうして良いかわからなくて逃げて来ちゃったんです…。」
私は肩を落として俯いた。
北「何で原さんが責任感じとるん?
喧嘩なんかほっといたらええねん。
殴り合って怪我しようが自業自得やねんから。」
「は、はぁ…。」
北「子供同士の喧嘩に親はいちいち首、突っ込まないやろ?
ほっといたって本人達はいつの間にか仲直りしとるもんや。
それと同じやで。」