第19章 花火大会
「侑君…私も、」
ドーンドーンと花火が次々と上がり、気持ちを伝えようとするが声がかき消されてしまう。
パクパクと口を開ける私を見て、侑君はフッ笑い、顔を寄せてきた。
侑「・・ホンマ可愛すぎ。」
きっと今の私の顔は茹で蛸みたいに赤いだろう…。
恥ずかしくて肩に回された腕をぎゅっと握り俯いた。
花火など見る余裕もなくなり固まっていると、
侑「・・キス、してもええ?」
耳元で甘く囁かれ、ぎこちなく頷く私を侑君はそっと胸の中に閉じ込めた。
そして侑君の指が私の顎を支えると、私は目を閉じた…。
侑「好きやで、ともみちゃん…」
唇に温かく柔らかい感触が当たった。
けどその感触は一瞬で離れてしまう。
ふと目を開けてみると、すぐ近くにある侑君の顔はほんのりと赤く、けどそれが妙に色っぽくて、私は産まれて初めて"欲情"というものを感じてしまった。
「・・キス、もっとして欲しい…」
消え入るような声で訴えると、侑君は目を見開きさらに顔を赤くした。
侑「なっ//止まらなくなっても知らんで?」
「・・うん。」
侑君の背中に腕を回し、目を閉じた次の瞬間、先程よりも深く長いキスが落とされた。
角度を変えて何度も唇を啄まれる。
ここが外だという事も忘れ、お互いに唇の感触を味わう。
息苦しくなり口を開けると、そこから侑君の熱い舌が滑り込んできて私の舌を絡め取る。
「ハァ、、」
濃厚なキスに思わず吐息が漏れ、立っているのも辛くなり必死で侑君の腕にしがみ付くと、ちゅっと音を立てて唇が離れた。
蕩けそうな程気持ちの良いキスに、思わず侑君の唇を目で追っていると、
侑「これ以上はやばいな…。てかそんな溶けた顔、誰にも見したらあかんで?」
蕩けきった顔をした自覚のある私は侑君の胸に顔を埋め、グリグリと頭を押し付けた。
「・・侑君が好き。大好き。」
その時、
ドーーーーンと一際大きな花火が上がり、遠くからは歓声が聞こえた。
空に高く上がる花火を見ながら、私達は顔を寄せ合い、キスをして、隙間がない位に抱きしめ合った。
すれ違ってだいぶ遠回りしたけど、この日ようやく私達の気持ちが一つに重なった。
涙が出るほど幸せで、心が満たされて。
でも幸せに慣れていない私はこの幸せがいつか消えてしまうような気がして怖かった。