第3章 下宿生活。
俺を気遣ってくれているのだろうか…。
つい表情が緩みそうになるのを抑え、いただきます。と呟き温かいご飯に食らいついた。
倫太郎「・・・うま。」
テレビから流れてくる声と携帯の僅かな操作音を聞きながら箸を進める。
横目でともみの姿を捉える。
今日なら少し話してくれるだろうか。
もう少し彼女の事が知りたくなって、半分くらい食べたところでふと気になった事を聞いてみた。
倫太郎「ともみはさ、何でこんなに料理が上手いの?両親が共働きだったとか?」
操作音が止まり、少しの沈黙の後ともみはポツポツと話し始めた。
「いえ……。両親は私が5歳の頃離婚して。それからは母と2人暮らしでした。
母子家庭でしたが、母にご飯を作ってもらえなかったので、料理は独学、、、と言いますか生きていく為に身につけたようなものです…。」
倫太郎「え・・?ごめ、、俺、何も知らないで…。」
訳あり、とは聞いてたけどこんな事情があった事に驚く。
「いえ。大丈夫です。」
倫太郎「その母親って、、、今どうしてんの?」
「母は2年前に亡くなりました。その時私はかよこさんに引き取って貰ったんです。」
倫太郎「・・そっか。色々大変だったんだな…」
「・・よく言われますが、あまり大変て思った事は無かったんです。母との9年間、私は"空気"でしたから。
話したり、目を合わせたりする事もなくて
戸籍上は親子でも、実際にはずっと1人でした。」
あまりの衝撃に言葉を失った。
こんな話をしていてもともみの表情や声のトーンはいつも通りのものだった。
なんとなく、彼女に感情がない事が理解出来た気がした。
倫太郎「だから1人で飯食ってるやつほっとけなかった?」
ともみと目が合う。
倫太郎「優しーな。」
俺は最後の一口を食べ終えて手を合わせた。