第17章 揺らぐ。
雨は容赦なく肌に当たりシャツやズボンを濡らして行く。
クッソ〜‼︎
今頃サムや角名は呑気に餃子食ってるんやろなー‼︎
そんな光景を思い浮かべた途端、落ちかけたスピードは速さを取り戻してバシャバシャと豪快な足音を立てて家路を急いだ。
ハァハァハァ。
ようやく下宿まで数十メートル、といったところでスピードを緩めた。
侑「ハァ〜、しんどっ!」
首に巻いたタオルで顔と髪を拭きながら歩く。
タオルからはほのかに華の匂いがした。
華は無事着いたやろか。
皮肉なもので下宿を目の前にして雨は小降りになっていた。
が、すでにずぶ濡れの身体が重い。
こんなんで風邪引いたら華にも北さんにも顔向け出来ひんな…。
そんな事を考えながら髪から下垂れ落ちる雫をそのままに、下を歩いていると、
「侑君っ⁈」
顔を上げると赤い傘をさしたともみちゃんがこっちに向かって走ってきていた。
侑「ともみちゃん⁇」
あー、、めっちゃ怒った顔しとるな…。
「もー‼︎携帯掛けても出ないし心配したんだから!こんなにずぶ濡れで‼︎だから傘持ってってって言ったのに!」
案の定、ともみちゃんはプリプリと怒っていて、手に持っていた傘とタオルを俺に差し出した。
侑「心配して迎えに来てくれたん?めっちゃ優しいなー」
ニヤニヤしながらともみちゃんの顔を覗き込むとプイッとそっぽを向いてしまった。
「だ、だって雨凄い降ってたし…。濡れたタオル持ってるから早くタオルで髪拭いて?帰ったらすぐお風呂だからね。」
侑「・・おかんモード発動やな。」
俺の一言にピクッと眉を上げ反応したともみちゃんは、びしょ濡れのタオルを奪い取るとスタスタと先を歩いて行ってしまった。
侑「ウソウソ!冗談やって〜。ともみちゃ〜ん!」
渡されたタオルは柔らかくてふんわりと石鹸の匂いがする。
落ち着くなぁ…ともみちゃんの匂いや…。
緩む口元をタオルで隠し、ともみちゃんの後に続いた。