第17章 揺らぐ。
侑「華、傘あるか?」
華「・・ないですけど、自転車飛ばせば寮まで10分ちょっとなので。」
侑「はー?こんな土砂降りん中自転車乗ったら危ないやろ?自転車は置いてきーや。
コレ、傘借りもんやけど使い?」
ビニ傘を華に渡そうとするも、ブンブンと首を横に振り受け取ろうとしない。
華「駄目ですよ‼︎侑先輩が濡れるじゃないですか!先輩が風邪引いたらどうするんですか⁈」
侑「そんな柔な男に見えるか?それに俺がダッシュすれば10分もかからんと着くし大丈夫や。華が受け取らんでも傘はここに置いてくで?」
俺は自分の足元に傘を置く振りをした。
華「えぇっ⁈わ、わかりました…。じゃあ有り難くお借りますけど、下宿に着いたらすぐにお風呂入って温まって下さいね⁈」
侑「分かっとるって。華も、もう遅いし気をつけて帰り?」
渋々ビニ傘を受け取った華は、鞄から何やらタオルを取り出し俺の胸元に押し付けてきた。
華「気休めにしかならないかもですが、使って下さい!あ、未使用なので大丈夫ですよ?」
侑「ハハッ、そんなん気にせんけど使わせてもらうわ。」
華はニコッと笑い頷くと、傘をさして駐輪場を出た。
華「じゃあ行きますね。先輩、ありがとうございました。」
侑「おん。ほな俺も行くわ!」
後ろ手で手を振り、駐輪場から飛び出すと、本降りの雨の中をひた走った。