第3章 下宿生活。
ここに越して来た時、かよこさん(叔母)にこれから朝食作りはともみの担当ね、と言われた。
別に料理が好き、とか得意とか、そんな風に思った事はないが生きてく上で必要な事だったから、子供の頃から料理や家事は全てやってきた。
かよこさんは朝ご飯は食べない。
そもそも朝が弱いらしく昼前ぐらいにようやく起きてリビングへ降りてくる。
私がここに来る前は朝食は各自で用意していたらしい。
かよこ「それでも良いんだけどねぇ、やっぱり各自でってなると皆んなめんどくさがって食べなかったり、ゼリー飲料みたいなので済ませる子もいたりで心配だったのよ。ほらやっぱり朝ご飯食べなきゃ脳が働かない、って言うでしょ?」
朝食を摂らない人が言うセリフとは思えなかったが、そこは黙って頷いた。
かよこ「私も最初は頑張ったのよ?でも朝早いと頭痛いし食欲なんて全くないからぜーんぜん駄目!作る気なんて起きない。もう1日でリタイヤよ、その1日もトースト焼いただけだけどねー!あはは〜」
「・・・・」
かよこ「それとね、ともみに朝食作りをお願いするのはあなたの為、でもあるのよ?」
かよこさんは少し真面目な顔つきになる。
かよこ「ともみは他人と関わるのが苦手だけど、これからは同じ屋根の下で暮らす人達の事、少しずつ知っていかないといけないし、知ってもらわないといけないの。
コミュニケーションが苦手なともみにとって、朝食作りは良いキッカケになると思うわ。
それに自分が作ったものを美味しいっ!って食べてくれるのってとっても幸せよ〜♡」
結局、朝食だけにとどまらず、週の半分以上夕飯を作る事になっていた時は上手く言いくるめられた、と思った。
でも今まで自分の空腹を満たすために作っていただけの料理とは違い、私が作った料理を"美味しい"と言って喜んでもらえる。
おかわりをしてくれる。
そんな反応が目の前で返ってくる事がとにかく新鮮だった。
会話が苦手な私でも、料理を通せば少しはコミュニケーションが取れる気がするのだから、かよこさんの言っていた事はあながち間違ってないのかもしれない。