第8章 それぞれの想い。
「・・あやかさん、何か笑ってましたね?」
倫太郎「・・気のせいじゃん?」
膝に置いていた手の上に倫太郎君の手が重なった。
綺麗な手…。
倫太郎君の長い指を眺めていると、
倫太郎「俺のクラスのやつがさ、ともみの事可愛いとか言ってて。告ろっかなーとか話ししてんの聞いてさ、すっげームカついた。
つーか、今まで見向きもしてなかった奴は引っ込んでろって話だよ。」
「・・・へ、へぇ。」
珍しく感情的に話す倫太郎君に少し驚いた。
倫太郎「・・・今俺の事、嫉妬深くて小ちゃい奴だと思った?」
私の肩から顔を上げ、拗ねたような顔で覗き込んでくる姿が何だか可笑しくて口元が緩む。
倫太郎君は普段は飄々としてクールなイメージだけど、2人きりになると普段は見せないような表情を見せてくれる。
「そんな事思わないですよ?」
倫太郎「てかともみ、また敬語に戻ってる。」
あ。と手で口を押さえる。
別荘から帰る車の中で、みんなから敬語はやめるように、と言われていた。
すると口に当てた手を倫太郎君が掴みぐっと顔を近づけてきた。
倫太郎「・・・ねぇ。もいっかいキス、してい?」
「キ、キス⁇」
熱っぽい視線で見つめられ、顔に熱が集まる。
倫太郎「嫌だったら突き飛ばしていーよ。」
そんな事出来るわけない…。
倫太郎君のもう片方の手が私の顎を支えると顔が近づき、あと数センチで唇が触れそうになったところで、
♪〜
テーブルに置いてあった携帯が鳴った。
倫太郎君の動きが止まり、私は気まずさもあり慌てて携帯を手にとった。
治君からのラインだ…。
倫太郎「・・もしかして、治?」
一瞬迷うが、コクリと頷いた。
倫太郎君の眉がピクリ、と動き不機嫌な顔つきに変わる。
倫太郎「・・俺、風呂入ってくるわ。」
倫太郎君はスッと立ち上がり、私の頭をポンポンと撫でるとリビングから出て行った。
・・・携帯が鳴らなかったら流れでキス、してしまうとこだった…。