第7章 夏の思い出
その時、
「見てみー‼︎あの兄ちゃんと姉ちゃん、今からチューするで?」
「ホンマ⁇え?もうチューした後なんちゃうん⁇」
無邪気な声が聞こえ、私は治君の胸から顔を離すと、網を持った子供達が岩場からこちらを見て指を差している。
治「コラァ!子供が何見とんねん!てかまだチューはしとらんわ‼︎」
「え、聞いた?あの兄ちゃん、まだ。って言うたで?」
「これからするつもり満々やん‼︎ウケるな‼︎」
治「な、何やと〜⁉︎お前らせっかくのムードぶち壊すな‼︎こう言う時は見て見ぬふりするもんやろがい‼︎」
子供相手にムキになる治君が可笑しくて吹き出してしまう。
「うわっ何か怒り出したし。大人げない兄ちゃんやなぁ」
「ホンマやな!逃げろ逃げろ〜‼︎」
治「誰が大人げない兄ちゃんや!早よあっち行け‼︎」
子供はゲラゲラ笑いながら走って逃げて行った。
私がクスクスと笑っているのに気づいた治君は、笑ったな?と言って肩を優しくぶつけてきた。
治「まぁ、ともみちゃんが笑ってくれたんなら、あのガキンチョ達には感謝せんとな。」
「フフッ、何ですかそれ。」
目を細めて微笑む治君。
治「・・・そうやって俺の側で笑ってたらええよ。」
繋いでいる手に視線を落とす。
優しくて大きくて温かい手…。
少しの沈黙の後、私はゆっくり口を開いた。