第7章 夏の思い出
治「オイ‼︎あんたら、人のツレに何してるん⁈」
海の方から治君が駆け付けて来てくれた。
けどその顔は怒りに満ちていて額には青筋が立っている。
治君の後ろには眉を顰め怖い顔をした侑君と倫太郎君もいる。
3人共髪は濡れオールバックになっていてかなりの威圧感だ。
一歩前に出た侑君と一瞬目が合うも、すぐに視線は地面にへたり込んだあやかさんに向けられた。
侑君は私の横をスッと通り過ぎると、あやかちゃんの目の前にしゃがみ込む。
侑「怖かったやろ?もう大丈夫や。」
あやか「・・・侑君。良かった…。」
目に涙を溜めるあやかさんを、侑君は安心させるようにヨシヨシと頭を撫でた。
そんな2人を目で追っていると、
倫太郎「ともみはこっち来な。」
ふと我に返った私は、男の腕を振り払い、倫太郎君が差し出してくれた手を取った。
倫太郎君は私の手をぎゅっと握り返すと男達を冷たい目で見下ろす。
「オイオイ、彼氏でもあらへんのに彼氏気取りか?その子は彼氏ちゃうから俺らと遊びたい、て言うてたで?なぁ?」
サングラスの男は嫌らしい笑みを浮かべ私の顔を覗き込む。
倫太郎君は男から庇うように私を背中に隠してくれた。
治君は今にも殴りかかりそうな勢いで男と距離を詰めると、
治「彼氏気取りの何が悪いんや?これ以上この子巻き込むならお前ら全員ここでしばき倒すぞ。」
治君の口から初めて聞く凄味のある声に、私まで背筋がゾッとした。
身長が180を優に超え、鍛えられた身体をしている男が3人となるとかなりの迫力だろう。
怯んだ仲間のうちの1人が、「もう行こーぜ。」と言うとそれを機に、それぞれ捨て台詞を吐き、舌打ちをしながら退散して行った。