第14章 《神威 ~ハロウィン~》
《神威 ~ハロウィン~》
「ねえ、○○。お菓子ちょうだい」
「は?」
突然人の部屋に押しかけて来たと思ったら、神威がまたおかしなことを言い出した。
いや、ダジャレじゃなくて。
「今日はハロウィンだろ」
「ハロウィンなんて、どこで知ったの?」
「前に地球に行った時。ハロウィンにはお菓子を用意して、好きな奴にあげるって」
「それ、二月の行事と混ざってない?」
宇宙船のガラスに映る神威の顔は、いつもの通りニコニコしている。
「大体、好きな人にあげるなら、私が神威にあげる道理はないでしょ」
「そういうの、ツンデレって言うらしいよ」
「それも地球に行った時に覚えた言葉?」
「そ」
地球に行くたびに、神威は妙な言葉や物事を覚えて帰って来ている気がする。
「ま、お菓子くれないなら、代わりのものをもらうまでだけど」
神威はニコニコ顔を崩し、鋭い目を向けて来た。口角だけは上がっている。
私にこんな顔を向ける時、神威はいつも何か悪巧みを考えている。
「代わりのものって、何?」
神威は私の耳に顔を近づけ、
「もちろん、○○自身」
耳たぶを舐めて来た。