第11章 《坂田銀時 ~雪の日の朝~》
「坂田さん、おうち、この辺りなんですか?」
「まだ十五分はかかるぜ」
この状態で十五分など、とても歩けそうには見えない。
「うち、そこなんですけど、少し休んで行きますか? これくらいなら歩けますよね?」
その言葉を聞き、銀時は額から手をどけた。
○○の指は一軒のアパートを示している。
「一人暮らしか?」
「え? そうですけど」
返答を聞くと、銀時は苦しそうにしながらも上体を起こした。
服に付着した粉雪を払う。
「んじゃ、行くか」
「一人暮らしじゃなかったら、来なかったんですか!?」
「そりゃーなァ……家族がいたら、邪魔だからなァ……」
「なんで邪魔なんですか!」
銀時は口元を緩める。
「あり? お前、なんか変なこと考えてねェ? ひょっとして、期待してんの?」
「なっ、何、言ってるんですか……!」
○○は顔を赤くする。
銀時はか細い○○の腕を掴み、雪の中を引きずって行く。
「お前の考えてるようなことはねーよ。休んでくだけだって」
「休むって……もう充分元気じゃないですか! 離して下さい!」
「元気じゃねーって。こういう時、男はなァ、謎の力が沸くんだよ。下半身から、こう……」
「やっぱり来るなァァ!! とっとと帰れェェ!!」
○○の叫びに刺激されたかのように、かぶき町に再び雪が降り始めた。
(了)