第11章 《坂田銀時 ~雪の日の朝~》
《坂田銀時 ~雪の日の朝~》
「イテテテ……」
朝七時。
昨晩、日が落ちた頃から降り始めた雪は、明け方には止んでいた。
それでも、降り積もった雪はかぶき町を白銀へと染めている。
銀時は二日酔いの頭を押さえて歩く。
「あー……だりぃ……」
絵に描いたような千鳥足。
今度こそ、酒は程々にしようと、銀時は何度思ったかわからないことを再び思う。
「うお!」
「イタ!」
銀時は何かに蹴躓き、新雪の上へと倒れ込んだ。
そのまま身じろぎもしない。
「イテテ……アレ? この頭……もしかして、坂田さん?」
雪に顔を埋もれさせている銀時の耳に、聞き覚えのある声が届いた。
「起きて下さい! 死んじゃいますよ!」
銀時は腕を持ち上げられ、仰向けの姿勢になった。
「やっぱり、坂田さんだ」
覗き込まれたその顔は、銀時の知っている人物だった。
「お前、パチンコ屋の……」
「はい」
□□○○。何度も通ううちに顔なじみになった、パチンコ屋の店員。
時々、銀時は○○に当たり台を教えてもらうが、当たった例はない。
「起き上がって下さい! 風邪、引いちゃいますよ!」
「勘弁してくれよ。タダでさえ吐きそうなところをいきなり倒されたんだぜ。その上、起き上がれだァ?」
酔っ払いが一度パタリと転がってしまえば、再び動き出すことなど困難。
銀時は額を手で覆い、こめかみを指で押さえる。
「ごめんなさい。拾いものをしていたんです。でも、しゃがんでいただけですよ。気づいて避けて下さいよ」
「お前、酔っ払いの視野がどんだけ狭いと思ってんだ。素手でダニを掴むようなもんだぜ」
「絶対嘘ですよね、それ」
「このまま凍死したらお前のせいだ」
「だから謝ってるじゃないですかー」
うーうーと、銀時は唸る。