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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第7章 おしえて、ちちうえ!



父子揃って湯浴み場へ向かおうとする男の背を見つめ、凪が声をかける。

「光秀さん」
「……ん?」

彼女の呼びかけに歩みを止め、光秀が振り向いた。視線が交わり合うと、凪が穏やかな笑顔を浮かべる。

「例え光秀さんが光秀さんの中の神様を信じていなくても、私達は信じています。……だから、どうか自分を大切にしてくださいね。光秀さんは、ただ歯車になる為の命じゃないんですから」

凪の言葉に光秀がほんの僅か、眸を瞠った。必要以上に多くを語る訳ではないが、そこに込められた彼女の想いを感じ取り、光秀の胸の奥に言葉にし難い幸福感が湧き上がる。次いで、母が投げかけた言葉に続き、子供達も笑顔を父へ向けた。

「父上も、どうか御自身を労う術を覚えてくださいね」
「ちちうえ、ちゃんとちちうえのこと、いいこいいこしなきゃ、めっ!」
「……やれやれ、巡り巡って俺自身が諭される事になるとはとんだ誤算だな」

若干素気ない声色と共に言葉ではそう言いながら、内心では光秀が照れている事を知っている凪が、微笑ましそうに口元を綻ばせた。妻の表情や、自身へ向けられる子供達の眼差しを眩しげに受け止め、やがて光秀が薄い瞼を伏せる。

「子らへ言って聞かせたからには、俺も善処するとしよう」

穏やかで優しい声色で応えた光秀は、そうして光鴇と二人手を繋ぎながら湯浴み場へ向かい、歩いて行ったのだった。




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