❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
果たして何位だったのかは分からないが、光秀が瞼を伏せてゆるりと肩を竦めた。光臣も実に複雑そうな表情のまま憮然と紡ぐ。清秀には割と以前からこんな態度だが、それはどうやら今でも健在らしい。それはさておき、凪がちらりと光秀の姿を見上げた。信長が一位であるのは何となく想像が出来るが、そうなると光秀はどうだったのだろう。世間の、それも後世の者達の評価など気にする彼ではないと分かっているが、せめて上位であって欲しいと思うのは当然の事だ。
(でも、訊いてもしあまり良く言われてなかったら……誕生日前なのに凄く嫌な思いする事になるよね)
恐らく今凪達が居る五百年後の現代は、凪や彼方、そして佐助がタイムスリップした事によって様々な歴史的事件が書き換えられた世だろう。だが、乱世を越えた先で歴史がどのように改変されて伝えられているのか、何処までを真実として伝えているのか、それは凪達には分からない。故に、後世の人々が【明智光秀】をどのように認識しているのかは、確かめようもないのだ。
(光秀さん自身は誰にも理解されなくていい、誤解されたままでいいって言うけど、やっぱり私は……少しでも光秀さんの意思や信念を沢山の人に理解して欲しいって思う。こんなに優しくて子供想いで、世の中を平和にする為に毎日頑張ってるんだって、知って欲しい。単に私の自己満足なのかもしれないけど)
確固たる信念のある者は、他者に必要以上の理解を求めないと言う。その他大勢へ理解などされずとも、強いその意思に惹かれた者達が、自然と導かれるように周りへ集まって来るのだと。今光秀の傍に居る光忠や九兵衛を始めとした忠臣達、そして共に日ノ本をひとつにせんと邁進する織田軍の武将達、彼らがきっとそうなのだろう。光秀はそれで十分過ぎる、と言うと分かっているが、大切な人を誤解なく見て欲しいという凪の気持ちはやはり容易に失くなるものではない。
(って、今は楽しい旅行中なのに私が暗い顔してちゃ駄目だよね。切り替えないと、光秀さんに心配されちゃう)