❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
「……わかりました。じゃあ、私も出来る事があったらお手伝いしますね」
「特別な事はしなくていい。お前や子らが居てくれるだけで十分だ」
偽りの無い本心を口にした男が、改まった様子で佐助へと向き直る。悠然とした笑みを口元へ浮かべ、光秀が告げた。
「そういう事だ、佐助殿。日取りに関する都合はつける。少々大所帯で済まないが、頼めるか」
「はい、任せてください。家族旅行が無事決行出来るよう、俺も引き続き観測を続けます」
「佐助くん、子供達共々宜しくお願いします」
光秀と凪へ頼まれ、佐助がしっかりと頷いてみせる。こうして神無月の初旬に本能寺で開くというワームホールで、光秀の誕生祝いを兼ねた家族旅行in五百年後が決行される事となったのだった。
(光秀さん自身が忙しい中でも頑張ってくれたっていうのも勿論だけど、六日間非番を取る理由を信長様達に説明したら、皆凄く協力してくれてどうにか確保出来たんだよね)
およそ半月前のやり取りを思い起こしていた凪が、自分と光鴇の分の荷物をまとめ終えて吐息を零す。光臣が用意してくれた光秀の荷物を別の布へ丁寧に包み、しっかりとまとめた後で傍へ置いた。無事荷造りを終えた凪を見て、光臣が労いの声をかけてくれる。
「お疲れ様です、母上。朝から色々と準備に忙しかったようですし、一息つかれては如何ですか?俺、お茶を煎れて来ます」
「ありがとう、臣くん。お願いしてもいい?」
「はい、では行って来ますね」
およそ十三歳、実際には数え歳である為、十二歳であるとは思えぬ気遣いぶりの息子の申し出へ、凪は素直に甘える事にした。父親に瓜二つの容貌を持つ長男は、その気質や性格もやはり父に色濃く似ている部分が多々見受けられる。そんな彼は、母に何かと頼られるのを喜ぶのだ。故に、こういった申し出は極端なものでない限り、素直に受ける事にしている。