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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 世の中は九部が十部



「おやすみなさい、光秀さん」
「ああ、おやすみ」

凪の頭を預けていた枕を退かし、俺の腕へと寝かせてやる。不要な距離感を取り払い、隙間なく抱き締めて瞼を閉ざした。薄い寝間着越しの暖かな熱は、微睡(まどろ)みをやがて連れて来る。暫くして穏やかな寝息が聞こえて来たところを見ると、気丈に振る舞ってはいても、やはり連日の多忙で身体は疲れていたのだろう。今朝見た時と同じ、あどけない寝顔を視界に収め、知らずと口元が綻んだ。

(朝、目覚めたお前にどんな意地悪をしようか)

先々は不確定な事ばかりであり、眠りに寄せるひとときに明日の事など考えもしなかった俺が、目覚めた時に凪へかける言葉をこうして考えている。まったく、政宗辺りが聞いたら笑い飛ばされそうな様(ざま)に、吐息混じりの笑いを零した。

腕の中で最愛が穏やかに眠っている。これほどの幸福はないと言いながら、欲深く明日の夜も同じであるようにと心の内で零す俺は、やはり十部などでは足らないらしい。

(明日も変わらず、俺にお前を愛させてくれ)

想いを交わしても尚、日に日に募り続ける愛を囁き、眠る凪へ口付けを贈る。そうして微睡みに意識が攫われるその瞬間まで、愛しい連れ合いの寝顔を堪能するべく、そっと柔らかな髪を撫で続けた。





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