❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「さて、帰るぞ凪」
「ま、政宗…このままで大丈夫ですか…?」
「御殿の家臣達も慣れてるだろうし、大丈夫だよ。俺が声をかけておくから。光秀さんの悪戯の所為でこうなったって」
「やれやれ、手厳しい事だ」
しっかりと悪戯を成功させた光秀に促され、凪達は政宗をその場に残し、部屋を出る。家康が政宗の家臣に伝えておいてくれたお陰で、彼は無事介抱されただろうが、色々と罪悪感ばかりが募る凪が、後ろ髪引かれる思いで光秀と共に歩く帰り道、ふと気付いた様子で隣を歩く光秀を見上げた。
「……もしかして光秀さん、わざと夕餉が終わった後にあのお酒出したんですか?」
「……ん?」
「だって包丁をお土産として渡した時、渡そうと思えばお酒だって渡せましたよね。新しい包丁を貰った政宗が、お礼に料理してくれるって分かってたから、皆が夕餉を食べ終わった後で出したんじゃないかなってそう思ったんですけど…」
「さてな」
さらりと誤魔化すように、あるいは受け流すように光秀が短く応えた。恐らくこれ以上追及しても正解を与えては貰えないと察した凪は、自分で立てた推論が合っていると思う事にした。光秀と政宗は元々何かと仲が良い。そもそも人をよく見ている光秀が、政宗の行動を読めぬ筈がないのだ。悪戯を仕掛けるにしても、料理を作って食べさせる事を喜びのひとつとしている、政宗の希望を叶えた後、と光秀なりに不器用な気を利かせたのかもしれない。
(……まあ、結局悪戯して酔い潰しちゃった事に変わりは無いけどね…)
「光秀さんの悪戯って、時々可愛いですよね」
「ほう……?ならばお前にも、その可愛い悪戯とやらをしてやるとしよう」
「え゛」
─────翌日、目覚めた政宗によって突き返された摩訶不思議な味がする御神水は、紆余曲折あって信長の手に渡り、不思議な感覚とその深い味わいから、すっかり第六天魔王お気に入りの一品となった事は、まだ誰も知らない秘密である。
了