❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
彼女の手から食べた菓子は、見た目通り柔く儚かった。優しく包み込むような感覚の後、一瞬で溶ける。舌先には鮮明な甘さが残り、口内をそれが満たした。ほんの僅か、綿あめを口に含む折に、唇へ凪の指先が触れてしまった事へ、罪悪感と共に言い知れぬ感情が湧き上がる。これ以上は危険だと、自ら踏み入りそうになる足先を無理矢理留めて、兼続は心の内を殺すといつも通り涼しい表情を取り繕った。
「柔らかくて甘いな。不思議な食感だ」
「尻尾生えそうです?」
「馬鹿を言え」
生真面目な感想を耳にして、凪が悪戯っぽく首を傾げる。乱世では決してあり得ない目映く明るい夜の中、彼女の黒い眸が楽しそうな色を帯びていた。吐息と共に零した短い言葉は、存外柔らかい。口元へほんのりと乗せた微笑へ、凪が些か驚いていたようだが、それはきっと舌先に今も残る甘さの所為だろう。そう意識の片隅で理由を付けた兼続は、凪の手にある水色の柔らかな綿菓子へ視線を向け、藤色の眸を僅かに綻ばせたのだった。
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武将達が初めての綿あめを食べた後、皆で瓶のラムネを飲んで涼んだり、じゃがバターを分け合って食べたり、焼きたてのベビーカステラを食べたりと、現代でしか中々味わえない食べ物を中心に出店を回って満喫した。目玉イベントである花火大会は十九時から行われる予定であり、それまで後一時間程の猶予がある。出店通りはまだ長く続いていて、端から端まで見て回るには、まだ時間がかかりそうだ。そんな折、ふと彼方と佐助が何やら相談しているのが見えて、光秀と手を繋ぎながら歩いていた凪が首を傾げる。程無くして互いに頷き合った後、彼方が凪達の方に向かって歩いて来た。
「凪ー、ちょっとここからグループ行動しよっか」
「うん、どう分ける?」
「あんたは明智さんと、後の人達は私と佐助くんでそれぞれ引率するから、そっちはバカップル同士、お好きにどうぞ」
「え!?でも、さすがにそれは悪いよ……」