第5章 ミヘン街道
「ルカでの疲れは癒えていないだろう。
休めるときにちゃんと休め」
「…バレてたの?」
「いつもより剣も魔法もキレがなかったからな」
ルカで倒れてからきちんとは休んでいなかったので、疲れは確かにたまっていた。
が、まさか気づかれているとは思っていなかったので彼の観察力のは驚くばかりだ。
「ほかのみんなにもバレてたかしら…」
「それは大丈夫だろう。
…とりあえず休め。お前はすぐに無理をする。」
私のいらぬ心配をよそにアーロンは椅子から立ち上がり私の方へ近づくと私の背中と脚の下に手を入れ持ち上げた。
___いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「ア、アーロン!?」
サーシャは急に視線がアーロンと同じくらいの高さになったことにも驚いたが、なによりもこの状況が顔が真っ赤になるほど恥ずかしく顔をうつむけてしまう。
一応力の限り抵抗したが、女の力で男の力にもかなうわけなくそのままベッドの上に優しく落とされる。
「お前が休むよう見張っとく」
ついには強制的に布団までかけられてしまった。
アーロンはベッドの近くに椅子を移動させ座る、足を組んでサーシャを見下ろしていた。
その様子から本当に見張っとくつもりなのだろう。
彼なりの優しさであるとは思うがこの状況ですやすやと寝れるほど私は図太くはない。
「こんな状況で休めるわけないでしょ…」
ぼそりとアーロンに聞こえないように呟いたが、私は彼が頑固だということを知っているのでここは逆らわずにお言葉に甘えることにした。
改めてベッドに体を預けると、身体は正直で疲れがたまっていた私はすぐに眠りについてしまった。