第1章 プロローグ
「なあ、サーシャ」
「なにアーロン?」
「もし俺たちが無事に帰ってきたら……いや、やはりいい」
「なによ、そこまで言うなら最後まで言いなさいよ!」
「いいと言っているだろう」
男は言いかけた言葉を続けようとはしなかった。
その態度に女は少し怒ったような表情を浮かべる。
「…ほんとにカタブツね」
女は小さく呟き、男のそばに気づかれないよう近づく。
そして彼がこちらを振り向くタイミングで、彼の唇を自分のものに重ねる。
「なっ…!」
「男なら黙って待っててくれって堂々と言えばいいじゃない!」
突然の事に男の表情は慌てふためている。
女はそれにまったく動じず、説教を続けた。
「……その代わりブラスカさん達との旅が終わったら、今度は私とずっといっしょにいてよね?」
「っ…!ああ約束する、サーシャ。必ず生きてここに戻ってくる」
そう、これは私たちの物語だ