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孤独な夜の瞼の裏には...【鬼滅の刃】

第1章 空虚






*


発展していくかつて江戸だったここはどれほど眺めたことか。


この国は豊かになり、いつしか侍のおらぬ世となった。


淡く春風漂うある夜、懐かしい笛の音が聞こえた。


その唄を聞いたのは、まだ私が人間だった頃か。


近頃、腕の中で血塗れた女が微睡に映る。


あの唄は、いつ聞いた唄だったか.....。


人の心は遠に捨てた。


全てを捨てて、仲間を、当主を裏切り鬼になった。


良き日の思い出など捨て去り、覚えておらぬ。
なのに何故........。








高い時計台の影から、黒い瓦屋根の海のような住宅街を見下ろす。


そこに見えたのは、私の髪色に似た幼子が屋根で笛を吹く姿。


心做しか、微睡みの中に見た女を思い出す。


何かが脳離に軋むが、目が離せずずっとその背を見ていた。


その幼女を記憶に留めておこうと思った。







何故かは知らぬ。


そうしたいと思っただけ。


他意はない。













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