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孤独な夜の瞼の裏には...【鬼滅の刃】

第7章 長夢



千鶴が瞼を開けたのは、ここに自ら来て3日目の夕暮れ時だった。

外は静かに雪が降っており、山奥であるここは深く雪が積んでいる。

晴れぬ空の下では、太陽に滅ぼされる体で昼間でも外に出ることが出来たため、千鶴が寒くならぬよう、薪を割ったものを持ってはいった時に目覚めていることに気づいたのだ。

「千鶴…」


返事はなく、微動だにしない。
近くで確認すれば、彼女の呼吸は安定してきたものの、まだ意識が明瞭ではない様子で、虚ろなまま天井を見ていた。


髪をひと撫ですると、目を細めて少し表情が歪んだように感じた。


「すまなかった…。私は、ここにいる」

「みち…かつ…様」


目覚めても夢を見ているのか、
はたまた、昔の記憶を思い出したのか、
虚ろなままで私を視界が捉えないままで、口元が人であった頃の名を呼ぶ。

鬼の名しか教えておらぬというのに。


数百年に戻ったような感覚になり、懐かしさで胸が締め付けられる。

今にもその身が壊れてしまうほどに包んでしまいたいという衝動に駆られる。


「申し訳ございません。千鶴はどれほど眠っていたのでしょうか…」

「3日ほどだ…」

「ずっと、巌勝様が看ていてくださったのですか?」

「そうだ…。休め。まだ病は治っておらぬ…」

「ご負担をおかけしてしまって申し訳ございませぬ…
すぐ治しますので…」

「ゆっくり休め。慌ててはならぬ。」

「…はい」


再び瞼を下ろすのを見ていると、ふとした違和感が確信に変わった。

否、

まだ確かなわけではないが、千鶴は、今を生きる千鶴ではないと、直感でそう思ったのだ…。

あの時、手元から去ったぬくもりが今、ここで目を覚ましているかのようで、壊れていった感情の記憶が体の感覚を伴って冷たい刃で貫かれたような衝動。

あぁ…この者は真に千鶴なのだ…

じわじわと込み上げてくるものが双眼を装う瞼に溜まり、一筋伝う。

溢れる思いの強さゆえに、それすら気づくこともなかった。


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