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物の怪の札

第2章 物の怪と札師





斎は陰陽寮を訪ねていた。

「斎、お前から出向いてくるなど、
どう言う風の吹き回しだね」
安倍晴明が眼を丸くして揶揄う。
「晴明様、
基兼を貸して頂けませんか?」
「基兼を?何故かな?」
「古都に腕の良い札師がいるのです。
そこへ行って来ようかと」
「護衛に、か。
私にもミアゲをくれるんだろうね?」
「何を御所望でしょう」
人の悪い笑顔に同じような笑顔を向ける。
「そうだねぇ、
本当に腕の良い札師なら、傍に置きたいな」
童のように晴明は笑った。








古都、平城京。
「こんな寂れちまったのか」
基兼が哀痛の声音で見渡した。

近衛藤原基兼(もとかね)、陰陽寮の側近をし、斎の幼い頃からの馴染みだ。
物の怪は見えないが、斎が側にいる為その類の物にも其れなりに慣れている。


「それで、ここに腕の良い札師?が居るんだっけ?
札なんて誰でも書けるもんだろう」
「書くのは誰でも出来る。
けれど、能力を持った者が書けば、それは使う側にも力になる」
「簡単に言うと、お前みたいな奴が書けば、
より強力な札が出来るって事だな。
じゃぁ、お前が書けばいいだろ」
ご最もな意見を放った基兼。







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