第1章 独り言
男達が嘲笑っていた斎と言う男は
髪を下せばまるで女にも見間違える程、
妖しい雰囲気の綺麗な容顔。
平安京内の勤めは陰陽寮に属してるいるとかいないとか。
日がな気ままに縁側で独り言を言い、
夜にはフラフラしている。
だから変な目で見られる。
物の怪憑きだと言われる。
本人は全く気にしていない。
飄々と、人の噂などどこ吹く風だ。
ゴソ…ゴソゴソ…
真夜中、褥に何かが、蠢く。
「ん…」
髪を誰かが引っ張る。
「んんー…なんだ?…」
目開けると、額の上に居る何かを手に掴んだ。
「ぐげぇっ…潰れますぅ」
手の中からか細い声。
「…済まぬ…餓鬼の稚那かい」
「へえ」
斎が稚那を追って縁側に出てみれば庭に物の怪や鬼が数匹集まっていた。
「古都に行って来てくれたのだね」
妖妖とした声で斎が尋ねれば、頷くが、
なにか言いたそうにしている。
「なんだい?」
震える声で兎の物の怪、兎葉が言ふ。
「あの札師、おっかない…。
蝶々、捕まっちまったー」
(捕まった?)
「何故?悪さをしたのか?」
蝶々は悪さをする物の怪ではない。
「しない。
突然、札師を投げたぁ」
「……」
(ふーむ…)
顎に指を当てて暫し考えた斎は
「あい、分かった。私が何とかするよ。
悪かったね。お前達皆、ありがとう」
物の怪達はまた闇夜に散らばって消えた。
「行ってみよっかね」