第5章 セカンドコンタクト
「コイツは楽勝だぜ!終わったらあとで可愛がってやるよ!!」
「………雑魚が」
ヒロは一言呟くと刀を抜くこともなく、いとも簡単に男の攻撃を受け流す。
避けられた男は勢い余ってぐるりと体を一回転させて受け身を取った。
「来い。斬り合わないと軍の奴らも可否の判断が付けにくいだろ」
「っのヤロー…がッは…!!?」
「!!」
突然、目の前の男が吐血した。
ヒロも男も一瞬何が起きたかわからなかったがよくよく見ると、男の腹部を貫通し赤く染まった刀の切っ先があった。
そしてゆっくり倒れていく男の後ろに現れたのは、まだ記憶に新しく残る男。
「なっ……」
「総帥!」
試験官の一人が叫んだ。
彼らも予期していなかったのであろう、そこに現れたのは軍を統括している総帥・シキの姿だった。
忘れもしない赤い瞳。
場所が場所でなければ今すぐにでも斬りかかっているところだ。
シキはヒロの正体を知っているのか、スッと静かに刀を抜いて言った。
「俺が相手をしてやろう」
「………光栄です」
やはりただ帽子を深くかぶっているだけの姿では、彼の目はごまかせないらしい。
もっとも、この場に彼が来ること自体が想定外の出来事なのだが。
ヒロも諦めたように二本の刀を抜き、先に仕掛けた。
刃がぶつかり合い、お互いに斬撃を繰り返す。
(俺のことはバレている……だが、何故殺さない?)
その気になれば今のヒロなど周りの兵士が束になるだけで潰せるだろう。
恭弥と同等の戦闘力を持つヒロでも、さすがに力では敵わないのだ。
その時、わずかにヒロの意識が乱れた瞬間を、シキは見逃さなかった。
「くっ…!」
真っ直ぐに、勢い良く振り下ろされた一撃。
反応は遅れたが、ヒロはなんとかその重い一太刀を受け止めた。