第4章 全ては君のために
「フン、面白い。ならば奪い取ってみるがいい」
「もちろん返してもらうよ……君を咬み殺して、ね」
「やってみろ」
それが合図だった。
二人は同時に互いの間合いまで詰め寄るとそれぞれに武器を振り下ろす。
恭弥の一撃目を避ければ、二撃目を繰り出されるより早くシキは斬撃を繰り出す。
そして恭弥はそれを紙一重で避け、再び休むこと無く攻撃を繰り返す。
「………!」
「どうやら、口だけではないようだな」
「君だって」
また二人が同時に攻撃の手を止めたかと思うと、気付けばシキの脇腹辺りの服が破れ、恭弥の頬にはうっすらと赤い筋が現れていた。
お互い一歩も譲らない状況の中、先にシキが口を開く。
「今日のところは引き上げるとしよう」
「それは有り難いね。こっちも早いところその子を連れて行きたいし」
「………次に貴様ら兄弟に会った時は、弟は貰い受けよう」
「!」
言いながらシキは刀を鞘に納め、それ以上何をすることもなくその場から立ち去った。
恭弥はすぐさまヒロの元に駆け寄り、突き刺された刀を抜くと自分のシャツを破って止血をする。
血の気が引いてるのか、ヒロの肌はいつも以上に白い。
恭弥は両腕でヒロの体を抱き上げると、ボンゴレのアジトへと足を速めた。
「面倒なのに目を付けられたね…」
まさか知っているとも思わなかったが、特に驚くこともなかった。
元々自分達は派手に抵抗している勢力だ。
自分達の情報が敵に漏れていることは少なくないだろう。
だがそれよりも、
「そう簡単にヒロを連れて行かせる訳ないじゃない」
今回は恭弥も予想外だったが、二度とこんな失敗はしない。
ヒロは誰にも渡さない。
そう強く、恭弥は誓った。