第4章 全ては君のために
「ヒロ!!」
「………何だ、もう一匹いたか」
時は三日前に遡る。
軍の総帥・シキを追い、途中二手に分かれた恭弥とヒロ。
だが、恭弥が着いた時には既にヒロは壁を背に気を失っていた。
通って来たルートは所謂ハズレ。
軍の待ち伏せに合って始末するのに手間取り、結果的にヒロを一人でシキと対峙させることになってしまった。
やっと辿り着いた恭弥の前に現れたのは、瓦礫が積み上げられて出来た壁に両手を自らの刀で突き刺され、意識を失っているヒロの姿。
そしてヒロの前に立つ赤い瞳の男。
辺りに広がる惨状を見て、この男が軍の総帥・シキなのだと恭弥は悟った。
「その子に触らないでくれる?」
チャキ、と武器を構えながら恭弥は言う。
ただでさえ普段から目を離した隙にボンゴレの連中に悪質な“イタズラ”をされているのだ。
それが敵のトップとあれば、腹立たしい事この上ない。
どこか面白そうに、シキは目を細めて言った。
「飼い主の登場か。なかなかペットの趣味は良いようだ」
「君には関係ない………ね!」
言いながら恭弥はシキ目掛けて腕を振り降ろすが、それは空気を切るだけに終わった。
目の前で血を流すヒロを見て、相手のことなど構っている余裕は無い。
一刻も早く恭弥はこの場所からヒロを遠ざけたかった。