第2章 旅は道連れ
"会いたい"と与六兄さまから文をもらった頃はまだ雪がチラついていたが
寒かった冬も終わりを告げ緑が顔を出し暖かな春がきた
『いい天気』
女ひとり旅に父は難色を示したが"大丈夫"と丸め込んだ
兄に会うため屋敷を出て、平坦な道を過ぎて山道に入り数刻で山頂を越え下りに入った
途中で湧き水を見つけ持っていた竹筒に水を入れた
『そろそろ今日の寝床を探さないと....』
一山越え半刻程進んだ頃には日が傾き夜の気配が辺りに漂ってきた
寝床を探しながら進んでいると日が完全に沈み月明かりが辺りをほのかに照している
先ほどまで聞こえていたはずの虫の声が聞こえなくなりピタリと歩みを止めた
『.....わたしに御用ですか?』
近くの藪の中からニヤニヤと嫌な笑いをした男が二人が出てきて道をふさいだ
「夜にひとり旅とは不用心な女だな」
「まあ俺たちには都合がいいがな」
屋敷を出てまだ一日もたっていないと言うのに父が心配していた事態になってしまった