第13章 本編 第27章 ~幕間 其の伍~
「ふ、福沢!?」
福沢の唐突な行動に目を見張らせた徳富は近距離に居る彼の名を呼ぶが、彼は気に留める様子もなく口を開いた
「不都合ならば異能力を使えば善い、」
「え……」
「私がお前を社宅まで送ろう」
思わぬ福沢の提案に徳冨は思わず目を瞬かせたが、次第に彼の言葉を理解すると徳富は何度も大きく首を横へと振る
「え、いや、善いよ!」
「だが、今のままでは動けぬのだろう、道中で倒れても心配故、」
「い――」
頑なに断り続ける徳冨に構う事なく歩を進めていた福沢だったが、徐に足を止めると同時に腕の中に居る徳冨へと視線を向けた
「これ以上断るならばこれからは稽古を控えさせるぞ」
「うぐっ……」
間髪入れず、先手を打つように告げた福沢の言葉に言葉を詰まらせた徳富に少し強めに言ったことが功を奏したのか、彼は暫しの後に観念する様に口を開いた
「……教えてもらった上にこんな事を頼むのは心苦しいが……そこまで言うのならば、宜しく頼む……」
居心地が悪いのか、他に理由があるのか――福沢から徐に視線を逸らした徳冨であったが、彼は対照的に満足気に目元を細めた
「それで善い、」
そんな福沢を知ってか知らずか、徳冨は鼻を鳴らしながら異能力を発動させた
そして、姿を変えた徳冨を福沢は再度、抱え直すと共に止めていた歩を更に進めた
しかし、帰路に着くまでの間、福沢が異能力の徳冨を堪能する様に優しく撫でていた為、実の処はあんたが一番得をしているのでは?と内心、徳富が密かに思っていたのは彼以外知らない話だ――