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天命と共に 【文豪ストレイドッグス】 第三者目線

第13章 本編 第27章 ~幕間 其の伍~


横浜にある道場では、畳に何かを打ち付けたかの様な音が響き渡っていた

其処には稽古の為に何度も福沢に投げ飛ばされた徳冨が浅く速い呼吸を行いながら大の字で寝そべっていた

しかし、徳冨とは対照的に福沢は汗の1つもかかず、悠然と立っていた

そして、福沢は徳冨に背を向けると顔だけを其方へと向けて言葉を発する

「少々休憩を入れる、根を詰めすぎても効率の善い成長は出来ぬ」

福沢の言葉に徳冨は先刻と変わらぬ様子で頷いたが、その表情は何か言いたげなものであった



――
―――
――――



「あ〜……あっちぃ、」

稽古により生産された熱を少しでも発散する為に徳富が手で扇いでいると隣へと腰を下ろした福沢が彼の方へとタオルと飲み物を差し出した

「使うと善い」

「嗚呼……すまねぇ、」

突如、差し出された物に目を瞬かせて福沢へと視線を向ける

「否、これは稽古と言えども身体が資本だ、体調管理を怠ればいざという時に力を発揮出来ぬ、それでは元も子もない」

その言葉に徳富は在りし日の出来事が自然と思い浮かぶ――そして彼は徐に顔を俯かせた、長い髪の隙間から覗く彼の横顔は何処か儚さを感じる表情であった

その表情を浮かべる徳富に福沢は疑問に思ったが、直ぐに彼の表情は変化した

「嗚呼……確かにあんたの言う通りだ、助言、感謝するぜ」

そう告げると表情を緩めた徳富は差し出されたタオルを受け取り、汗を拭き取る

「……徳冨は、」

その間、福沢が話題を変えようと徳冨へと視線を向け、彼を呼ぶ、彼もその呼び掛けに応じる為か、顔を上げた

「ポートマフィアに居たと言っていたな」

突如、福沢の口から出た敵対組織の名に徳富は一瞬だけではあるが、目を見開かせる――そして同時に彼が思い出したのは旧晩香堂の前でポートマフィアの五大幹部である中原と交わした会話であった

徳冨はタオルで汗を拭くのを止めて、顔を俯かせながら、小さく頷いた

「……すまぬ、私は何故お前がポートマフィアに身を置いていたのかを問いたい訳では無い、ただ――」

言葉を切った福沢は先刻の徳富の表情を思い浮かべながら徳冨へと視線を向け、抱いていた疑問を投げかけた
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