第11章 本編 第20章 花と紅葉、雪と金色
――すると、徳冨の傍で太陽に反射して光るものを見つけた
福沢が屈んで確かめるとそれは未だ通話中となっていた、徳冨の携帯電話だった
福沢はそれを拾い上げると徳冨の血痕と思わしきものを拭った後に携帯電話を閉じ、懐へと仕舞う
そして、己の羽織を徳冨へ掛けて、立ち上がる際になるべく傷に障らない様に、揺らさぬ様に、慎重に彼の背中と膝窩へ腕を通すと抱えて、腕の中へと収める
傷にまみれ、血に濡れ、力無く福沢に身を預ける徳冨を食い入る様に見つめる彼に誰かが呼び掛ける
「社長、」
――それは真っ直ぐに福沢を見つめる太宰であった
福沢は太宰の呼び掛けに徳冨から視線を外すと彼へ向ける
「彼女を連れ帰っても構いませんか」
静かに問う太宰が指したのはこの場に居た者達と同じく血に濡れて倒れていた尾崎だった
福沢は太宰と尾崎の両者を見つめると共に暫し、沈黙した後に尋ねる
「……ポートマフィアの者か、」
「はい、」
迷いなく答えた太宰を福沢は暫し見つめた後に再び、言葉を発した
「何か、考えがあるのだな……」
確信めいた言葉に力強く頷く太宰、福沢は彼を再度見つめた後に瞼を閉じて言葉を紡ぐ
「……太宰に一任する、」
「ありがとうございます、」
「急ぎ、社へ戻るぞ」
福沢は浅く頭を下げる太宰を一瞥すると共に徳冨を優しく抱え直すと踵を返したのだった――