第9章 本編 第16章 文豪ストレイドッグ
「真逆、ただポートマフィア本部から惨い遺体が落ちて来たら、組織の評判が下がる
私はただ、マフィアの評判を落としたくないだけだよ、エリスちゃん
いつも言っているでしょう? 私は組織の為ならば何でも、喜んですると」
そう言い、森はエリスに笑みを見せる、しかし、その瞳に笑みはない
その表情は森が誰にでも見せる首領としての顔だ
しかし、ずっと傍に居る、ましてや森の異能力でもあるエリスには判っていた
その笑みは無理に押し出した笑いであることをーー
それが証拠に意識のない徳冨の方へと視線を向ける森の瞳は何処か切なそうで、口を噤み、彼を見つめ続ける表情の奥には悲しみが見えた
しかし、この表情こそ、森が滅多と見せない"真の姿"なのだ
「それに、私が助けなくても……エリスちゃんの言う通り、徳冨君はもうじき死ぬだろう……」
いつもとは違う、自信がなく、弱々しく笑う森を見たエリスは注視すると共に息を吐いて、彼から視線を逸らした
その時、騒動を聞き付けてきたのか、構成員が集まって来た
「どうかしました!? 首領、」
「嗚呼……君達、丁度善い処に」
森の処へ着くなり、跪く構成員達に視線を向けると共に指示を出す
「市警、軍警に見つからない場所にこの子を放置しておきなさい」
「はっ! 畏まりました!」
その言葉と共に運ばれて行く徳冨を暫し見つめた後、森とエリスは彼に背を向けて本部内へと消えていった