第9章 本編 第16章 文豪ストレイドッグ
「だが、いつか……蘆花は天命の番に、彼の人に会う」
「天命の、番……?」
「嗚呼、その人に会って、番って……蘆花は、彼の人の隣に……相応しい女性になる」
迷いもなく断言する織田に太宰は尋ねる
「何故、判るんだい……?」
「判るさ……誰よりも判る、」
織田は柔らかい笑みを浮かべて太宰に告げた
「俺は、蘆花の相棒だからな……」
その言葉に太宰は再び目を見開かせるが、やがて彼も織田と同じ表情を浮かべた
「蘆花は……今、背負っている過去の分まで、幸せにならなければならない」
織田は太宰を呼んで言葉を続ける
「……お前が、俺の代わりに……この世界で、幸せになる蘆花を……見届けてやってくれ」
「……判った……織田作が言うなら、そうしよう」
織田の願いを聞き入れるように大きく頷いた太宰の言葉に彼は徐に頬を綻ばせた
「その人の名前は……」
「……判らない、だが、1度だけ接触したことがある……」
太宰の言葉に織田は"あの時"を思い出すように、言葉を紡ぐ
「銀色の髪をした、燃える瞳だった、だが、その奥に何か暗いものを感じた……でも、芯が強い真っ直ぐな目をした者だった……」
織田はふと、思い出すように続け様に言葉を紡ぐ
「……嗚呼、確か……彼の人には"異名"があった筈だ……」
「異名……?」
「嗚呼、確か……"ーーー"と、」
織田が唇で形作る、それに太宰は小さく頷いて言葉を紡ぐ
「……判った、私もその人を探してみるよ」
「嗚呼、すまないな……太宰、」
織田は真っ直ぐに太宰を見つめると小さく呟いた
「蘆花を……頼む、」
「……嗚呼、織田作の護りたかったものを……私が守ってみせるよ、」
頼もしい友の言葉に、織田は安心したように、微笑した