第9章 本編 第16章 文豪ストレイドッグ
「織田作……」
太宰は織田の腕の中で気を失っている徳冨を見つめながら小さく呟く
しかし、織田は太宰を一瞥すると共に徐に目を細めるのみだった
そして、織田は腕の中に居る徳冨を徐に背負って、歩き出した
「行くな、織田作!」
太宰が織田を止めようと、肩を掴もうとするが、背負われた徳冨さえも掴む事が出来ず、織田は歩を進める
「織田作っ!」
太宰の悲痛な叫びがこの場に轟いた
ーー
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此処はポートマフィアの医務室ーー
先日、織田が徳冨を運んだ場所だった
織田は医者に手短に説明をして、預かって貰うことにしたのだ
織田は背負っていた徳冨をベッドへと優しく下ろす
そして、自分も手近な椅子に腰掛け、暫し、徳冨を見つめる
「すまないな、蘆花……目が覚めたら、きっと、お前は怒るんだろうな、」
更に、手を伸ばして、優しく徳冨の頭へと手を乗せた織田は彼を優しく撫でる
「だが、お前には……これからを生きて、幸せになって欲しい……」
その手つきは今までで1番優しく、まるで、最後を惜しむかのように、後悔のないように、今までの分を、そして、此れからの分を堪能するようにーー
ーーその刹那、
「さ……く、」
織田は撫でていた手を反射的に止めた、そして、様子を見るように静かに徳冨の顔を覗き込む
しかし、起きてくる様子は無く、静かな寝息だけが聞こえる
それに織田は小さく笑みを溢すと共に再び、頭を撫でるのを再開させる