第4章 本編 第10章 Murder on D Street
ーー夕刻、殺人事件を華麗に解決した江戸川は共に現場へ向かった徳冨、中島、そして、途中で合流した太宰と探偵社へ帰るため、駅までの道を歩いていた
「凄かったですね、乱歩さん、真逆、全部中てちゃうなんて……"異能力、超推理"ーー本当に凄いです」
太宰と歩いていた中島は初めて間近で見た江戸川の異能力に感銘を受けた様に呟いた
「あんなに乱歩さんの事を純粋に褒める徳冨さんの気持ちも判ります」
そして、前方では中島と同じく江戸川の異能に魅せられた徳冨が子供の様に彼の辺りをはしゃいでいる姿を微笑ましそうに見つめた
「そうだねぇ、健次郎君は……ああ見えても純粋だからねぇ」
太宰は小さく笑みを零しながら言葉を紡ぐ
「歳上には見えないはしゃぎっぷりだろう、健次郎君は……気に入った人には、特にね」
「はい……ってえっ!? と、歳上……!? はいっ!? と、徳冨さんが……太宰さんよりも歳上……!?」
何度も太宰と徳冨を見比べながら戸惑う中島に彼は思い出したかの様に言葉を紡いだ
「ん? 嗚呼……君はまだ知らなかったかぁ」
太宰は小さく柔らかい笑みを零した
「健次郎君はああ見えても27歳だ……もしかしたら、探偵社員の中でも1番歳上になるんじゃないかな」
「に、27歳……しかも、社員の中で、1番歳上……!? み、見えない……」
中島は前方を歩く徳冨を再び凝視する様に見つめていると太宰は笑みを零す
「うん、善い反応だ、矢張り君には教え甲斐があるねぇ、中島敦君」
「な、何故太宰さんは徳冨さんの年齢までご存知なんですか、徳冨さんは頑なに年齢を教えてくれなかったのに……」
「それはね……」
中島の質問に太宰は不敵な笑みを浮かべた
「健次郎君の事で私に判らないことなんてないからさ!」
そして、親指と人差し指の間に顎を乗せて自慢げに言う太宰に誰しもがこの場に居るのが徳冨であれば嫌な顔をしているのが直ぐにでも思い浮かぶだろう……いや、それだけでは止まらず、いつものように後ろから首を絞め上げる姿も思い浮かぶ
この時、太宰もその事を想像して、苦笑を浮かべる中島を思い浮かべていた
しかし、中島の反応は予想に反するものであったーー