第4章 体育祭、それぞれの準備
(…ンだよ)
そんなに嫌だったのかよ。
俺と手を繋いだのは。
(――…ッ)
内心で舌打ちをする。
しかし、アザミにそうゆう態度をとらせたのは―――アザミを傷つけたのは、紛れもなく俺自身だ。
一瞬、アザミに伸ばしかけた腕を降ろすか悩んだ。
しかし、無理して“普段通り”を貫いているアザミを思えば、この腕を降ろす訳にはいかない。
ガサッ
「俺も食う」
「え?」
アザミが持つビニール袋から“激辛明太子”と書かれたおにぎりを取り、俺は歩き出す。
…トレーニング後はなるべく炭酸水化物やたんぱく質を補給した方がいいからな。
「食ったら再トレーニングだ。テメェもだ、アザミ」
だからジャージ着てんだろ?とスマホを弄りなが問えば「え?あ、うん!一緒に食べよ…!」と、慌てて俺の後を追いかけた。そんなアザミの姿を確認し、メール送信ボタンを押した。
*
「かっちゃんの筋トレ、きっつ〜〜ストイックすぎる〜〜」
「筋肉に負荷掛けなきゃ、意味ねェだろーが」
「そぉだけど…明日の筋肉痛怖い…!!」
「ハッ、鍛え方が足んねェな!」
筋トレとランニングを終え、帰路に着く。
アザミが普段取り入れてない筋トレメニューを組んでやった。泣きごと言いながらもよくついてきたなと思う。
…口が裂けても、アザミには言えねェが。
「おら!この辺のもの食っとけや」
筋トレ後に炭水化物を補給すりゃあ、効率よく筋肉を増やせるからな。とアドバイスし、差し入れが入った袋を再びアザミに投げつけた。
「おっとと…ねえ!
これ、私が昔から好きなお菓子だよ!」
美味しんだよね、ふふ。と嬉しそうに笑うアザミ。…単純なんだよ、テメェは。
「テメェがこの間学食でそう言ってたじゃねえか」
「かっちゃん、よく覚えてるね?!」
うわあ、嬉しい!ありがとう!
……なんて。喜び過ぎだ、バカアザミ。
「ッたりめぇだろーが」
単純すぎんだよ。
アザミよりも馬鹿なのは、紛れもなく俺だ。
そんなんで嬉しがったり喜んだりするアザミを見て、それ以上にそう思っちまう俺自身だ。
……浮かれんのも大概にしろ、俺。