第4章 体育祭、それぞれの準備
言いてえ事がある。
「――――よお、」
バイト終わりのアザミを見つけ声をかける。
「えっ?!なっ!!なんでいるの…!!
かっちゃん!!!!」
「いたら悪ィかよ」
…まあ、そうゆう反応になるわな。
バイト後に待ち伏せなんかされたら、気持ち悪ィはずだ。
どう思われるか俺の心配をよそに「み、見てた?!今の…ッ!?」とアザミは違う心配をしてやがる。
おそらくプルスウルトラだか何だか叫んで飛び出してきた事を言っているのだろう。
心配すんのはそこじゃねぇだろーが。
「何がプルス、」
「わー!わー!!わーー!!
もう言わなくていいよ、恥ずかしい!!」
アザミは慌てて俺の発言を遮った。
「バイト終わる時間、何で知ってんの?!」
「テメェが2時間くらいで終わるっつってたじゃねーか」
「……言ったかもしれない」
「自分の発言くれぇ覚えとけや、鳥頭」
「と、鳥…!?」
アザミは言葉を失うもすぐに「2時間でバイト終わってなかったらどうしてたの?!遅くまでこんな人気のないトコに居たつもり?!」と捲し立てる。だから心配すんのはそこじゃねーだろうが。
「筋トレついでだ」
アザミは俺のジャージ(タンクトップにボトムス)姿を見て「筋トレ?!寒くない?!」とやっぱり余計な心配ばかりしやがる。
「てか、ここ私のバイト先…!」
「うっせーな」
違え、そんな事が言いてえんじゃねェ。
言いたい事が言えねえ自分と、ワーワーと俺の心配で騒ぐアザミにだんだんと額に青筋が浮きだつ。
「ッンなこたあ知ってんだよ!!オラ!!」
「わっ…と!何これ?」
アザミにビニール袋を投げつける。
「あ、ドリンクと…おにぎりとお菓子だ!どうしたの?」
「差し入れだ」
「え?」
「疲れてんだろ。バイトで」
「…ありがと。でも、食べれない」
「あ?」
「太っちゃう」
最近おやつ食べすぎちゃって、と苦笑いしながら言うアザミに手を伸ばす。
「じゃあ返、」
「食べます食べますありがとう!」
「最初っからそう言えや」
再びアザミに手を伸ばすと、
――――ビクッと。
アザミの体が僅かに跳ねたのを、俺は見逃さなかった。